ABOUT
ENTRY
COMMENT
TRACKBACK
ARCHIVE
BOOKMARK
FAVORITE
OTHERS

SHOGENISM

職人
もう昨年のことだが『NATIONAL GEOGRAPHIC』の撮影で焼き物で有名な益子に行く機会があった。この街に数ある窯元の中で、一際立派な登釜が並ぶ大誠窯さんにお邪魔し話を聞かせてもらった。大誠窯では百数十年の開窯以来、代々希少な赤松の薪を燃料とした登窯を使用し、昔からの製法を守り続けている。そのため生産量が限られていて、他に出荷することはなくここでしか買えないと言う。長年使い古された道具が並ぶ工房。積み上げられてきた時間の匂いが染み付いた職人たちの仕事場には荘厳な空気が漂っていた。時々冗談を交えながらも、焼き物に筆を入れていくご主人の眼は真剣そのものだった。
「たくさんある益子の窯元の中で、色彩や形など大誠窯のオリジナリティみたいなのはあるんですか?」と聞いてみたら、「何十年も造り続けててその人の個性が作品に滲み出てくることはあるだろうけど、特別それを出そうと思って造ってはいないよ。人と違うことを狙ってすることが個性だとは思わないな。」という、伝統を重んじ長年造り続けてきた匠の言葉に感銘を受けた。

平成職人の挑戦』という、明治以降、新造されることのなかった飛騨高山の祭山車を大工、彫刻、金具、塗り、織り、からくりなど各分野の職人たちが集結し、新しく平成の祭屋台を完成させるというドキュメンタリー映画がある。地味だが職人たちの技とこだわりが随所に見られ、彼らの静かな情熱に思わず胸が熱くなる映画だ。その中でも鉄金具職人の新名さんが、1000人に1人も気付かないだろうけど、作品の中に自分の道楽を残したよと嬉しそうに語っていたのが印象的だった。誰も気付かなくてもという「道楽」、自己満足的なその「あそび」こそがアーティストとして最高の贅沢なんじゃないかと思わせる職人の意思と誇りと笑顔がそこにはあった。
飛騨の職人たちの素朴だけれど自信に溢れたその生き方は、大誠窯のご主人と共通するものが感じられた。同じ日本人としてこのような伝統文化、職人が存在していることを心から誇りに思えた。



うまくいくこと
うまくいかず悔しい想いすること
いろいろあるけど

一つ一つの作品を大切に
魂を込めて創り続けていこうと
改めて誓った




| - | 00:00 | comments(3) | trackbacks(0) |