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SHOGENISM

もののけの森
1993年屋久島は世界遺産に登録され『もののけ姫』以降、ある種ブームとなった今日では毎年10,000人以上の観光客が山を訪れるという。
幸運にも『Warp 7月号』の撮影で憧れだった屋久島の地を踏むこととなった。
初日はミーティングと下見だけで、二日目早速今回の最重要目的である縄文杉を目指す。AM3:30出発。真っ暗な山道を車で麓まで行き、そこからは自分の足だけが頼りとなる。空が次第に明るみ始め、山の輪郭が少しずつ見えてきた頃、寝ぼけ眼の我々一行は、昔、材木の運搬に使用していたというトロッコの線路の上をトコトコ歩き出した。山から下りてくる風はひんやりと冷たかったが、覚めきらない頭には丁度よかった。懐かしい濡れた草の匂いがした。

トロッコ道が途絶え、それまでと違った険しい山道を登っていく。だんだんと身体にかかる負担も大きくなり、みんなの口数も減ってくる・・・。「月に35日雨が降る」といわれるほど降水量の多い場所だけに、滞在中の天気が懸念されていたが、最良の天気に恵まれ、歩いている内に次第に汗ばんできた。途中、ウィルソン株、翁杉といった絶好のロケーションを見つけ次々と撮影をしていく。
せいぜい100年しか生きられない人間が、半年ごとに生まれ変わる洋服を着て、圧倒的な自然に囲まれて撮影することがなんだか滑稽に思えた。今回はその対比と、畏敬の念を感じる自分と壮大な自然との調和が表現できればと撮影に望んだ。

とうとう長い道のりを踏破し、神々しい縄文杉の姿を目にした時は、達成感で胸が一杯だったが、自然の中に設けられた人工の高台が景観を損ね、興醒めしてしまった・・・。元々は縄文杉に触れることもできたのだが、増加する登山客によって木の廻りや根を傷つけられたため、今では保護柵が張り巡らされ、15メートルほど離れた高台の上から眺めることしかできなくなったらしい。縄文杉の近くまで行けなかったのは残念だったがそれでも推定7200年といわれるその荘厳さはやっぱりすごかった。辺りは静かな気が充ちていた。
目を瞑り、ゆっくりと深呼吸をする。目の前の大きな存在を感じ、少しずつ心を通わせていく。
気持ちが穏やかになるにつれて、自分自身が森と同化していくのがわかる。最も理想な状態・・・。そして静かに対話するのだ。
人間はこのために生きているのだと再確認する。来てよかったと心から思える素敵な場所だった。

島に着いてすぐに僕が気付いたことは、どこのお墓もきれいに掃除され、色鮮やかな花が供えられていることだった。宿のおじさんから、島の人はほとんど毎日お墓参りに行ってお供物をするのだと聞き、えらく感心した。自然を尊び、先祖を崇拝するという、日本古来からあった生活をこの島の人は未だ続けているのだ。

自然と人との共存?。
一貫してアニミズムを作品のテーマにしてきた宮崎駿さんが『もののけ姫』で伝えたかったことはそういうことなんだろうと思う。都会に住む人間のエゴなのかもしれないが、これからも屋久島がそのままであって欲しいと願い、島を後にした。
| - | 22:33 | comments(1) | trackbacks(0) |